あいつ/サボ
「サボ、良いこと教えてやろう。今朝取れたての情報だ」
「ほう、なんだ?」
「お前熱あるぞ」
「ガセネタだな」
「本当だって。今朝お前を起こした時体熱かったもん」
「メラメラの実のせいだろ」
「んなわけあるかボケ」

まー飽きもせず毎日仕事仕事。
俺が映像電伝虫でノースブルー上演の舞台を見てるときも書類仕事してたし俺が夕飯にするなんて建前で釣りをしていた時もフェスタの足取りを掴んだとか言って証言を取りに行ってたし、俺が久々に仕事として海軍と海賊による闇取引を潰していた時にはあの海賊万博に赴いて大仕事を終えていた。
それだけ大きな仕事を終えたんだから一週間くらい休んだってバチは当たらないだろうに。
仕事がお好きらしいサボは俺の向かいで新聞から注視すべき事件を目を皿にして探していたり海軍の秘匿通信を傍聴しようと必死にコードを探ったりしている。
というかそれは俺のような下っ端の仕事であって参謀長官殿がやる仕事じゃあない。

「ほら。俺の半分も終わってないだろ?それくらい体調が悪いって証拠だ」
「……さんが早すぎるんだ」
「馬鹿言え。比較対象もいないのに早いもくそもあるか」

去年は4、5人いたこの部署もいつの間にか俺だけになっていて「に任せときゃ問題ない」なんて体の良いことをドラゴンさんに言われたっけ。
つまりそれくらいあってもなくてもいい部署ってことだろうと考えてる。

話が逸れた。つまり俺たち二人しかいないこの部屋で、更に言えば俺一人で事足りる作業をサボが手伝う必要はないのだ。
熱があるなら大人しく休んでほしい。

「サボ。この間の大仕事を終えて疲れてるんだ。今日はもう休めよ」
「何でだ。今仕事中だぞ」
「こんな仕事俺だってできるんだからお前がやる必要ないって」
「……」

何だよ何だよ。いつもの丸い目を尖らせて睨まれる謂れはないぞ俺ァ。

「そんなにおれを追い出したいか」
「休ませたいって意味では、うん。追い出してぇ」
「……」

語弊のないよう伝えるべく新聞から目を離しきちんと顔をあげて対応してやる。あぁあぁあぁ、あんなに顔を真っ赤にしてやっぱり熱が高いんだろう。

「サボ、顔が赤い。熱があるなら──」
「じゃあここで休む」
「おいそこ俺のベッド……、なんだ、部屋まで戻れない程キツいのか?」

いつも人懐っこい笑顔を浮かべ東西南北あちこちに飛び回るサボの弱々しい姿は見ていて可哀想になってくる。何かしてやれればいいが、生憎おっさんの個室に気の利いたものなど置いてあるわけもない。せめて傍にいてやろうと仕事道具を片していたのだが、サボの表情を見るにひどく嫌がっているようだ。

「あー……なんだ。俺が出て行きゃあいいのか?」
「違う。さん、仕事が」
「あぁ問題ないよ。明日やればいいか、ら……」

今度は目に見えて顔を歪めた。なんだ、また何か答えを誤ったのか。
いつもは聞かなくても一人でペラペラ喋ってるサボが口を開かないから俺が慣れないながらにあれこれ聞き出そうとしていると、サボはしょんぼりした様子で口を開いた。

「明日……」
「ん?」
「明日はさん、休みだから、この間の事……色々話そうと思ったのに……」

だなんて。子供の頃から変わらない甘え方をされては叶えてやるしかないだろう。

「なら俺は今日中に仕事を終わらせるから、お前は今日中にその熱下げろ」
「無茶言うなァ」
「お前が大人しく部屋に戻って残り半日ぐっすり寝てりゃあ治る」

なんなら運んでやろうか、と冗談を飛ばしたらやってみろ非力と返された。なんと、こんな煽りを受けたら乗るしかない。


「歩けるから!離せって!」
「いやいや。明日までに治すためにも、体力は温存しないとな!」

横抱きにされて暴れるなら歩くよりよほど体力を消耗しそうだがまぁいいだろう。

俺だってずっと、サボの事を甘やかしてやりたかったんだから!
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