「アイスバーグさ~~ん!!どこですかアイスバーグさん!アイスバーグさァァァんッ!」
「ンマー!うるせェ!仕事をしやがれッ!」
「いた!!アイスバーグさァん!!!」
船大工が木槌を叩く音よりも大砲を試し撃ちする砲撃音よりもルッチに喧嘩を売るパウリーよりも騒がしい男の声につられついアイスバーグが声を上げるのだから、探し物が見つかったと言わんばかりに
は全速力で駆け寄った。
「探しましたよアイスバーグさん!」
「ンマー!やかましい!仕事中だぞ俺ァ!」
「だって勝手にどっか行くんですもん!行き先くらい教えてくれないと俺不安になっちゃいますよ!」
「ガキかテメェは!」
ぎゃいぎゃいと喚く二人に対し遠慮ぎみに声をかけたのは世界政府の役人、コーギーだ。
「仲良くしてるとこ悪いんだが、俺は今この人に用があってな……」
「アァ!?仲がいいだと!そんな目が腐った奴と話す事なんざねェ!帰れ!」
「分かってんじゃんコーギーさん!俺たち仲良しだから邪魔しないで帰って!」
片や腰に回された腕を必死に剥がそうと睨みながら、片やどれだけの力で絞めているのか緩みもしない腕を回しにこにこしながら。双方に「帰れ」と言われては強面が歪んでしまうのも仕方がない。
二人の圧にやられすごすごと帰っていく役人など気にも止めず二人の攻防は続くのだが、それを監視している人間がいるなど、この時のアイスバーグには知る由もなかった。
***
「アイスバーグさぁぁぁん!?嘘どこォ!?!?!?パウリーアイスバーグさん知らねぇ!?!?!?知らねぇのかよ役立たずッ!アイスバーグさぁぁぁん!!!どこですか!!!アイスバーグさァァァんッ!!!!」
「…………ハァ……」
「
ですね。相変わらず喧しいっポー」
「ンマー、言っても聞かねぇし、若干諦めてるよ」
「何故あいつはあそこまで貴方になついているんじゃ?何か特別な繋がりでも?」
1番ドッグを取り仕切る二人と今後の進度について確認している時にもこの騒ぎだ。
にはカリファに伝えておくよう言ったのだが、聞き逃したのだろうか。
「ンマー、もう7年位経つのか?捨て犬と同じで拾ったらなついた」
「それだけですか?クルックー」
の雄叫びをバックミュージックに三人の会話は進む。何かを探られているような気がするが気のせいか。思案する間もなく背後から何かを蹴りつける大きな音と、続いてパウリーの怒号が響いた。
「アイス!バーグ!さんッ!!」
真上から落下してくる声はそのままアイスバーグの正面に立つロブ・ルッチに向けて踵落としを食らわせた。
「……に、近付くな……ッ!」
獣のような形相は普段の間抜け面からは想像できないような険しいもので、ロブ・ルッチが触発されニヤリと笑みを浮かべてしまい、カクがフォローに入れなければこのまま一戦殺りあっていただろう。丸い目に素が出ているぞと窘められ顔を下げた。
「ンマー!
テメェ!大工の手を狙う奴があるかッ!」
「そうだぜ!そもそもお前の仕事はやったんだろうなァ!?」
そんな形相が見えていない背後の二人は加害者である
を叱りつけルッチから引き離した。
「こっち来いッ!」
「うそ……アイスバーグさんから引き寄せてくれるなんて嬉しい……」
「うるせェバカッ!」
ガツンッ、と殴られた後頭部を押さえながら悶絶する
はいつも通りの間抜けな男そのものだった。興が削がれたルッチはまた肩にハットリを乗せ「やれやれ」と鳩に言わせる。
「俺は今日職長達を巡回して作業の確認をすると言って置いただろうが」
「言ってないよ!カリファさんはそんな事言ってたけど!」
「そう聞いてるなら何故騒ぐ!」
「アイスバーグさんの口から聞かなきゃヤダー!」
「ガキかッ!」
「なぁおい
、お前仕事サボって来てるんじゃねェよなまさか」
「まさか!全部ぜーんぶ終わらせてきたよ!」
抱きついた両腕を離し大きく広げぜーんぶ、と子供のようにアピールをするから、パウリーが嘘をつくな、と小言を言うのも無理はない。
「本当だよ!ちゃんと検品して、不備がなかったから資材は3番ドッグに運んだし、何なら余った時間で素材ごとに並べておいたよ!」
「……本当かァ?」
「ンマー、こいつの馬鹿力は俺も認めるが……」
「やたー!アイスバーグさんに褒められた~~!羨ましいかパウリー!」
「だっから!パウリー“さん”と呼べッ!」
背後からの露骨な視線に今気付きましたと言わんばかりにくるりと顔を向ける。キャップの下では
を睨んでいるのに、口は器用に笑っているカクに
もにっこりと笑って応酬する。
「あぁごめんなさい。何か話してたんだっけ?」
「いや、もう終わっとる。気にせず連れてって構わんぞ」
「俺を物みたいに言うな」
「そうだよー!この人は俺の、大切な人だから」
笑っているのに、目の奥はすん、と静かでルッチとカクを威嚇する。
大切な人だから、渡さないよ。
まるでそう言うように。
駄犬のふり
「……あいつは厄介だな」
「あぁ。じゃがあちこちにネットワークを張ってるから殺すのも目立つぞ」
「だから厄介なんだろうが」
に背を押される形で去っていく三人の背後でそんな話が行われていることを、この時のアイスバーグには知る由もなかった。
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